大判例

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仙台高等裁判所 昭和26年(う)301号 判決

原審第二回公判調書中の証人大内弘の供述記載、大蔵事務官の佐々木保巳に対する調査顛末書中の同人の供述記載と被告人に対する大蔵事務官の犯則事件調査顛末書及び検察事務官の供述調書中の被告人の供述記載並びに、大蔵事務官の差押目録の記載を綜合すると本件事実関係は被告人は肩書地に居住しているものであるが、昭和二十四年十一月二十一日頃宮城県登米郡豊里村大字赤生津字横丁五十五番地で貸席業をしている義弟の佐々木保巳方に手伝に行つていた折登米郡米山村の五十四、五才位の氏名不詳の男が右佐々木方に來て応待に出た被告人に対し水枕に入れた酒をよこし、「二、三日位してから友達二、三人で來るから料理の方をお願いします」と言つて、本件の密造酒を差し出し他の容器にあけてくれと言うので、被告人は佐々木方の台所から一升壜二本を持つて来てそれにうつしその男に右ゴム袋を渡してやり、その後この酒を台所の戸棚に入れてしまつておいたところ、同月二十三日朝税務署員が來て、どんな酒を使つているか見せてくれと言うので、その日佐々木方に泊つていた被告人は台所から前記の酒を持つて來て税務署員に見せたところ密造酒だと言われたものであること、及び酒を持込で飲む関係上酒をおいていく客はこれまでにもあり被告人は右の酒も密造酒ではないかと思いつつも客の言うままに受けとつたもので、このことについては、前記佐々木保巳は全然関知しなかつたというのである。そして酒税法第五十三条にいう「免許ヲ受ケザル者ノ製造シタル酒類酒母又ハ麹ヲ所持シ」という場合の「所持」とは自分の支配し得べき状態のもとにおくことをいうのであるから一方において、これらの酒類等の所有者がその保管を他人に託したとしてもその受託者を通じて間接にその者の保存につき支配関係を持続すると認められるべき限り、なおこれを所持すると言つてよいし、他面これらの酒類を預つたものでもそれを自分で直接支配し得る状態においたと認めらるべき限りはこれを所持するものと言わざるを得ないのである。然し、如何なる意味においても、自ら支配し得べき状態においたと認められぬ以上は、これを所持したとは言い得ないことは、もちろんと言わねばならぬ。

今、これを本件についてみると被告人が前記の如く本件の密造合成酒を受け取つたのは、原判決にいう氏名不詳者からの依頼により同人が所持していた右の清酒を単に機械的動作としてこれを受け取り、しかもこれをしまつておいた場所も被告人の自宅ではなく、前記佐々木保巳方の台所の戸棚内なのであるから、如何なる意味においても自分の支配し得べき状態のもとにおいたとは認められないのである。

然らば被告人の本件所為は前記酒税法第五十三条にいわゆる「免許ヲ受ケザル者ノ製造シタル酒類ヲ所持シ」た場合として処罰の対象とはならないものと解さねばならぬ。従つて弁護人の所論は結局において理由がある。

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